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　先月も申し述べました様に，この夏如何に葉を落さずに乗り切るかが秋花への良否を決定付ける事は勿論の事，来るべき春花への素地を
も確定付けるものですから，剪定迄の―連の夏の手入れは特に慎重に行い，秋から来春に向けての秀花を心に描きつつ楽しい作業としたい
ものです。この様な意味から今月の手入れは，消毒，灌水と施肥，整枝とシュートの管理等を経て，月末よりの秋剪定に至る迄の―連の作
業が中心となります。

　１）消　　毒…………………………………定期散布を励行。

　２）潅水と施肥…………………………… ①潅水とマルチングの効果。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ②追肥は立地条件に合せて。

　３）整枝とシュートの育て方……………（秋の剪定を前提とした一連の下地造りを）

　　　　　　　　　　　　　　　　　 ②シュートの育て方。

　４）秋の剪定 …………………………………①剪定のタイミング。

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　花後の定期散布を実行して居りましたら，殆んど病虫害は受ける事なく８月を迎える事が出来たのではと思われますが如何だったでしょ
うか。
　落下傘虫（夜盗虫の幼虫），夜盗虫，黄金虫，チューレンジハバチ，油虫等に依る僅かな被害や，梅雨時に於ける少々のウドンコ病が発生
した程度で，大した被害ではなかったのではと思われます。その上，シュートの１，２本も出て居りましたら立派なもの，大成功でしょう。
この後は剪定後、秋花の枝立ての段階での集中消毒が肝要となります。７月迄の間，殆んど病虫害の発生を見なかったとすれば，今月は上，
中、下旬と夫々殺ダニ剤を入れた，定期散布剤で消毒すれば充分でしょう。今月特に注意を要する事は，葉ダニが最も蔓延し易い月ですので，
常時下葉の葉裏を観察して早期発見に努めて下さい。
　
定期散布用薬液

ダコニール１０００（黒点病用）……………………………　５ｇ(cc) … (2,000倍）

　　またはジマン・ダイセン（黒点病用） ……………… １０ｇ(cc) … (1,000倍）

　　トップジンＭ(ウドンコ病用) ………………………………… ５ｇ(cc) …　(2,000倍）

　または　ベンレート（ウドンコ病用）…………………… ２ｇ(cc) … (5,000倍）

スミチオン（害虫用）……………………………………………５cc………… (2,000倍）

カスケード乳剤（殺ダニ用）……………………………………５cc………… (2,000倍）

　　水……………………………………………………………… １０㍑

　ウドンコ病の発生を見ない場合には上記薬液からトップジンＭやベンレートを外しても構いません。

（注）薬剤散布は２８℃以上になると薬害を起し易いので，出来るだけ早朝か夕方日が陰ってからの散布が無難です。

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（１）灌水とマルチングの効果
　厳しい暑さの下での太陽光の照りつけは，全く強いものですので何とかばらの生育の成果を期待する為には，先ず潅水とマルチングが重要
な手入れのポイントと云えるでしょう。充分なマルチングがしてあれば，１週間に１度程度充分に灌水すれば良いのではと思いますし，土壌
造りをするためにも非常によい結果となります。

（２）追肥は立地条件に合せて
　夏の元肥が施してあれば，今月の追肥は特に必要はないでしょう。然し肥保の悪い土質の場合は，様子を見ながら水代りに薄い水肥を施す
様にしますと効果が良い様です。
　９月に入りましたら，有機肥や遅効性の化学肥料は与えず必要に応じて速効性の化学肥料を与える様にします。　特に秋の剪定直後は，芽
出し肥として速効性の液肥などを与えると効果があります。　

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３．整枝とシュ―卜の育て方

（１）整枝
　今月の手入れは秋の剪定を中心とした一連の作業が主体となりますので，先月と同様に新しいシュートの伸び具合を見ては古い主幹枝や弱
い小枝は切除し，急激な育成変化を来たさない様に葉付きのバランスを考え作業を進める様にします。

（２）シュートの育て方
　今までに発生した夫々のシュートを対象に，秋の剪定迄に配慮すべき，シュートの管理とピンチのタイミングについて述べることに　しま
　す。

　①５～６月の頃に出たシュートは，４～５段位に伸びて来て居る頃と思われますが，伸び過ぎると剪定時には，どうしても管理上深切り
　する結果となりますので，ショックも大きいものとなります。そこでこの場合は例外的に，このシュートを必要以上に伸ばさない方法を
　考えます。即ち　４段目が伸びて蕾が付いても放置し，蕾の色付いた頃に蕾のみを切除する様にします。其の後も脇蕾が付きましたなら
　同様に蕾を取り去る様にして，秋の剪定迄は出来る限り４段迄で抑える様にしながら，剪定時には，並咲種ならば４段目の中間部位，遅
　咲種ならば３段目の高部位で剪定出来る様に下地を作ります。

　②　７月中旬頃に出たシュートは２～３段目位に伸びて居ると思われますので、剪定時にタイミングよくピンチすればよい事となります。

　③　７月下旬～８月初めに出た途中シュートは８月２０日前にピンチし、再度秋の剪定時にタイミングよくピンチしますと良い秋花の為
　の下地となります。但しベーサルシュートの時は早目に１段目をピンチして，２段目か３段目で剪定出来る様にタイミングの下地を　作りま
　す。

　④　８月中旬以降に出た途中シュートはタイミング的に２段目でのピンチは無理となりますので，１段目でピンチしてそのまま秋花へと
　つなげます。但しベーサルシュートの時は品種や樹勢の状態にも依りますが，花枝を多めに立てて樹力の分散を図る様にし，頂芽の花は
　期待せずに二段芽/三段芽を咲かせると良い花が付きます。

　この様にしてシュート発生の起点と伸び具合，剪定時に於ける段数と部位，或は夫々の品種に依っての特性があること等を理解して，秋の
剪定の適切な下地作りをしてみましょう。

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（１）剪定のタイミング
　秋花の素晴らしい時期は，地域的に差異を生じますが，当地では１０月中旬より１１月中旬頃迄の１ケ月位が，バラの開花の最も良い時期
と思われます。この時期に花を咲かせる為には，９月１日を中心にして，前後５日間位に剪定をする事が良い様です。春の剪定は若干剪定日
が前後しても大きな影響はなく，特別の気象変化のない限り品種に依る多少の差異はあっても，決った頃に陽気が咲かしてくれます。ところ
が秋の花は，剪定が５日も遅れますと季節はずれの無駄花となって，素晴らしい花を見る事は無理でしょう。そこで秋の剪定日を決める事は，
展示会等の出品者にとっては特に重要な課題となる訳です。特定の品種は別として―般の品種は９月１日に剪定しますと，おおよそ４０日～
６０日位の間に開花する様になります。
　例えば，９月１日に全品種について―斉に剪定したとしますと，早咲種は１０月１０日頃に，遅咲種は１１月始め頃に開花する様になりま
す。又，剪定日をこれより早めますと加速して開花は早まり，遅らせますと相乗して開花が遅れる結果になります。この為，剪定日を３日早
めますと１週間以上も開花は早まり，逆に３日遅らせますと１０日以上も開花が遅れる様になります。この様にして，秋の剪定と開花との因
果関係は非常に重要ですので，展示会，品評会等で期日が指定されている様な時は，剪定のタイミングを慎重に決める必要があります。これ
等の品種の性質に依る他，剪定の部位，天候，立地条件等に依りましても開花の差異を生じますので，私は品種別に過去の実績と今後の気象
見通し等を勘案して，次表の様に早咲，並咲き，やや遅咲，遅咲，と４分類し、夫々の品種毎に剪定の中点日を決め，中点日より前後１～２
日（朝と夕方にする配慮も必要）に亘り確率的に分散して剪定をして居ります。

早咲種	並咲種	やや遅咲種	遅咲種
天津乙女ウェンディカッソンズエナ　ハークネスオールド　ブラッシュサマー　サンシャイン高雄チガ－ヌデザ一ト　ドリームバーナビービルゴピカデリーピンク　ラスターヘレン　卜ローベルマーガレッ卜マグレディース　アイボリーマグレディース　イエローマダム　ヒデ魅惑ミッシェル　メイアンロイヤル　ハイネス	アドミラル　ロドニーアルテス'７５宴香久山ガーデン　パーティキャプテンハリーステビングスコロラマコンラッド　ヘンケルコンフィダンスゴールデン　ハート紫雲静の舞（PartⅡ）シアー　ブリスシャルル　ドゴールシャルル　マルランジャルダンドゥバガデル春芳そどおり姫ディオラマ白秋初恋春世ピースファースト　プライズ粉粧楼ブラック　ティブルー　ム一ンヘンリー　フォ一ド星月夜（PartⅡ）マイクマダム　サチメルヘン　ケニギンモンパルナスヨニナレディー　ラック	あけぼの杏里（あんり）乾杯クリスチャン　ディオ一ル化粧坂（けわい）香貴サマー　ホリデー賛美ジョン　ウォターラースーパー　スタースイート　ハートスター　クイン清涼殿丹頂ディーム　和子ドリー　バートンノイエ　レビュー緋衣ひろしま　チルドレンビッグ　チーフビッグ　レッドフロージン　８２武州ホワイト　マスターピースマダム　ビオレ女神やぶさめ(流鏑馬) ランドラレディ　エックスレッド　デビルレッド　ライオンローズ　ゴジャールロ一ラロマンス	エスメラルダオールドタイムオジアーナ金閣クイーン　エリザベスコルデス　パーフェクタ静の舞（PartⅠ）ドルチェ　ビータ熱情フォルトナレッド　クイーンブルグンド　８１ヘリテージみずほ

　私は実践上或一定の品種を剪定する場合（並咲種のとき）
　　中点日（９／１日，朝と夕に分散）に　５，
　　中点日の２日前迄に　　３，
　　中点日の２日後迄に　　２，
の割合で先ず分配し，其他剪定部位を考慮に入れて実施して居ります。

（２）剪定部位について
　剪定の作業で前述しました様に，品種に依り多少の差異はありますが，一般に秋の最良花の主幹は，７月１５日頃に発生したべーサルシュ
ートが２回目のピンチを終えて剪定時には３段目が２０cm～５０cm位に伸びた処をピンチして、秋花のステムとする状態が最高のタイミング
でしょう。然しこの様に全てがタイミングよく行くものではありませんので，以下良花を得る為の実践法について述べて見たいと思います。

①　ベーサルシュート４段目が２０cm～５０cm位のとき。
　４段目をピンチして５段目に秋花を咲かせますが，高所となり秋花管理に難を生ずるときには，３段目の中央部で剪定します。４段目が１
　５cm以下位のときもこの部位で剪定します。

②　ベーサルシュート５段以上のとき。
　５，６月頃より早目に出たベ―サルシュートは，前述のシュートの育て方の項に於いて説明しました様に特殊の手法に依って制限して育
　てて来た関係上５段以上には為らないと考えますが，万一葉を落としたり其の他の理由でやむなく５段以上になって仕舞ったとき，３段
　目の中央部で剪定する事は作用のショックが大き過ぎるので無理があります。従って、３段目の中央部を支柱に結んで上部を水平に倒し
　支柱に固定します。（２段目以下は曲げない様にする）先の方は軽く切りつめて置く様にします。芽立ちは一週間位遅れますが，芽立ち
　日数を換算してタイミングよく倒す様にすると，中央部より３，４芽が出て良花を得る事が出来ます。

③　ベーサルシュート２段目が２０cm～５０cm位のとき。
　２段目をピンチして３段目に花を咲かせます。２段目をピンチして間もなく（剪定適日の５～１０日位前にピンチしてあるとき）剪定の
　適日となる様なときは，２段目の中央部の良芽の上で剪定します。然しシュート２段目ですと秋花にとって少々精力が強過ぎるおそれがあ
　りますので，太めのシュートのときは３本位の花枝を立てる様にして樹力のバランスを図ります。

④　ベーサルシュート１段目が剪定日に２０cm～５０cm位のとき，又はそれ以前のとき。
　１段目をピンチして２段目に花を咲かせます。又、剪定時以後になって出たシュートが９月１５日頃迄にピンチ出来る程度の１５cm以上
　の長さになって居りましたら，良花は望めませんがピンチしてシュート１段目の幹の充実を図る様にします。　然しこの状態に達してい
　ないベーサルシュートは，心を鬼にして元からかき取る様にします。

⑤　途中シュート又は春の花枝の元から出た芽のとき。
　一般に途中シュートはベーサルシュートに比し精力が弱いので，その太さに相応して１段目か２段目で剪定，又はピンチをして下さい。
　太い途中シュートの場合は，ベーサルシュート以上に良い花を見る事が出来ますので，大切に育てて下さい。又剪定期にタイミングよく
　下部附近より出た途中シュートは，特に秀花となる可能性がありますので，慎重に育てて下さい。

⑥　春に咲かせた枝のとき。
　春に咲かせた枝で株全体のバランス（同化作用）を考えて，残して来た花枝を剪定する事等よくある事ですが，数少ない秋花の事ですし
　花はやや小振りですが締った良い花となります。大切に育てて試して見ては如何でしょうか。

　以上の様に，剪定のタイミングと部位については，幾多の差異ある条件の下で剪定をする訳ですから，夫々の多くの経験を通して多様な
　アレンジも必要かと思います。
　来月は，剪定本番の月となりますので，図解を交えた剪定の実践法について，補足して見たいと思います。

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（１）鉢植えバラの手入れ。
　鉢植えのバラ剪定は，地植えのバラに比較して約１週間位早く咲く様になりますので，タイミング的には地植えの剪定日（品種別）より２
日位中点日を遅らせて剪定日を決めますと，地植えのばらの開花日と一致します。
　灌水はマルチング等の保護をして居なければ，毎朝夕の２度灌水を必要とします。　然し顔色（葉とステムの色調）を見ながら灌水代りに，
薄い水肥も施す様留意します。

（２）つるバラの手入れ
　つるバラは全く元気で暑さにも負けずどんどん伸びて行きます。　茂って込み合った枝や古枝は整理して、通風をよくし新陳代謝を図って
下さい。　つるバラは病虫害の発生源となりますので，消毒は特に丁寧に散布する様にします。

（３）台風対策
　８～９月と台風シーズンを迎えますので，剪定が終り次第支柱を立てて主幹をしっかり固定したり，風通しの強い所はヨシズや寒冷紗に依
り風雨対策の準備をする様にして，何時でも対処出来る様にしておきます。